東洋医学松柏堂医院

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食べるクスリと服用するクスリ

7:マメ科
7-8: 白扁豆 [びゃくへんず:へんず:フジマメ:千石豆]


 このシリーズで取り上げたマメ科の生薬は、モノが豆だけに「食べる生薬・服用する生薬」に相応しいものが多く、ざっと拾っただけでも以下のように多くあります。
 葛(クズ)・甘草(かんぞう)・小豆(あずき)・納豆・落花生・エビス草・.阿仙薬(あせんやく)・刀豆(なたまめ) など、みんな食卓に上がる、または上がり得る(食品=クスリ)ものばかりです。
 その他、食卓に上がることはないが、黄耆という重要な生薬もマメ科だし、下剤でおなじみのセンナもマメ科です。人類は古くから豆を食用ばかりでなく、クスリとしても使いこなしてきたのです。

 白扁豆は、中南米原産のマメ科のツル性の一年草、フジマメの白色の種子で、形が扁平だから白扁豆。花は扁豆花、種皮は扁豆衣、葉は扁豆葉といってどれも薬用になります。花が「藤の花」に似ているからフジマメ、たくさん採れるから千石豆とも。
 隠元が中国から日本にもたらしたというので、関西地方ではこのフジマメをインゲンマメと呼ぶようですが、関東ではインゲンマメといえば、サヤエンドウなどのことですこし異なります。

 食用としてはこのフジマメも、サヤエンドウ同様に若い鞘が食用になります。
 漢方的には解暑・健脾・止瀉、つまり夏風邪の下痢を止め、夏痩せを回復し、しゃんとさせる作用があるとされ、慢性的な胃腸虚弱には人参などと組んで「参苓白朮散」という有名な処方になります。また急性症状のいわゆる暑気あたりに使う「香薷飲」にも配合されています。
 越後=新潟の“毒消し売り”といえば、明治時代までは、紺絣の筒袖・脚絆姿の未婚女性の半年以上にもわたる長期の遠隔地への出稼ぎ行商でした。「毒消しゃ要らんかネー」という売り声で全国に広まった“越後の毒消丸”の主成分もこの白扁豆でした。
 漢方的効能を応用した「毒消し」ですから、食中毒・食あたり・夏風邪・食欲不振・下痢・腹痛などに効くわけです。


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