東洋医学松柏堂医院

東洋医学松柏堂医院

食べるクスリと服用するクスリ

7:マメ科
7-2: 甘草( かんぞう )


 甘味が砂糖の150倍といわれる「甘い草」、甘草の根は、甘味料や薬として使われます。「良薬は口に苦し」と言いますが、甘味もこれくらいになるとハンパではなく、この甘さは立派な薬だと判断した人間は、やはり大したもので、洋の東西を問わず古来からさまざまな薬効が知られています。

 漢方生薬の甘草は、さまざまな漢方薬に含まれており、最も多量に多様な処方に使われていることから、重責を担う「国老」という別名があるくらいです。また甘草一味だけの「甘草湯」という処方もあり、さまざまな傷みによく効くので、憂いを忘れる「忘憂湯」と呼ばれます。

  ヨーロッパではスペイン甘草、日本で使われているのはウラル甘草とか中国甘草とかいわれる中国の北方に自生しているものです。この八月の夏休み、私は中国の北方、内モンゴル自治区近くの砂漠地帯の、甘草の自生地を訪ねてきました。このへんは、万里の長城の西の端にあたり、旧満州あたりの東北甘草に対して西北甘草といわれます。

 360°なーんにもない砂漠、私どものバスが走ってきた道路が一本、むこうの地平線からまっすぐ走って反対の地平線に消えている他は何にもなし。 一面に甘草がかなりの密度で自生しており、羊飼いが羊に甘草の葉を食べさせています。一区画を人間が収穫しても、残った根から数年後には再びもとにもどるという、理想的なほっとけ農業というか自生地です。ここの羊は甘草の葉を食べているから、このマトンを食べるとお腹の痛みがなおるとか。嘘みたいですね。肉をたくさん食って胃の痛みをとるなんてあまり聞かないでしょう。

 薬効成分はグリチルリチン。加水分解するとおなじみのグロン酸。グリチルリチンは肝臓病に効くというのは、現代医学の疑問の多い常識ですが、グロン酸が疲労回復に効くというのはこれはもうデタラメです。 甘草は日本国内でも栽培が試みられたことがあるし、アニマルファームでもしばらく生かしておいたことがありますが、国内では量産できず、江戸時代では毎年60トン、現代では毎年1万トンくらい輸入しています。大半は、しょう油の甘味やタバコの味つけに使われ、残りが漢方生薬として使われています。


pagetop