東洋医学松柏堂医院

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食べるクスリと服用するクスリ

7:マメ科
7-3: 小豆 [あずき・赤小豆]


 大豆に対して小粒だから小豆。赤いから赤小豆、ともに日常的には「あずき」と読みますが、漢方薬として呼ぶときは、セキショーズといいます。
 学生時代の思い出。アリコ・ルージュという喫茶店があってバイトをしていたのですが、フランス語で赤い豆という意味。あずきのことかー。その頃、学生結婚で女の赤ちゃんのできた友人に名前の相談を受け、「あづき」はどうだとこちらは冗談半分に言ったのが採用されて……。そのあづきちゃんも今では立派なレディーです。

 さて小豆は、中国・日本など東アジア原産で古くから栽培されています。近縁の緑豆(リョクトウ)は、中国でも、“はるさめ”や“もやし”に使われますが、小豆は日本人が特に好むようで、他国では食べられず、栽培されていてももっぱら日本への輸出用です。日本での栽培は北海道中心で、相場商品。天候次第で価格の変動がはげしいので「赤いダイヤ」なんて呼ばれていましたね。最近はあまり言わない?

 食品としてはもちろん、お赤飯。お赤飯には、小豆よりやや大粒の「ささげ」もよく用いられます。それになんといってもお汁粉にあんこ、羊カン。子どもの頃から甘党だった私。砂糖が充分に手に入らない時代でしたから、甘いアンコに対する憧れはつよかった。臨海学校で、さんざん海で遊んだあとの塩辛い口に、お汁粉の至上の味。今でも生クリーム系の甘さよりもアンコに手が出ます。

 くすりとしての使い方は、民間的には、砂糖などを使わずに、小豆を水で煮るだけ。母乳の出をよくしたり、往年の「脚気」(脚のむくみ)に用いられました。あづきをセキショーズとして漢方薬に用いることを知ったのは、漢方をはじめて数年、赤小豆と鯉を煮たものを腹水の貯った患者さんに食べさせてむくみをとったという論文を読んだときです。赤小豆鯉魚湯というそのものの名前のついた方剤です。薬膳に近い方剤ですが、塩も砂糖もなしですからおいしいことはない。珍しい方剤では、胃に入った毒を吐かしてとり除く、吐剤といわれる柿蔕散があります。これは柿蔕(カキの実のヘタ)と赤小豆を粉末にしてまぜたものです。

 京都では伝統的に十日にいちどはお赤飯を食べていました。十日間のたまった水分(水毒)をすっきり利尿するためです。上記のように砂糖を入れないで煮たアズキの作用を、ごはんと胡麻塩で生かした生活の知恵です。


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